「メソンエルメス」では、全体で一万枚以上にも及ぶとされる特注品のガラスブロックの、一個一個が、微妙に異なった模様をしており、そこには人の手の感触が示され、結果としてより自然に近い素材感が表明されているのである。自然素材への傾倒は、二〇世紀初頭から半ばにかけての、いわゆるモダユズムと呼ばれた時代のことを思い出すと、隔世の感がある。モダユズムの時代には、素材はそれほど注目されることはなかった。もちろん、アルヴアーアアルトのような北欧のモダユストや、フランクーロイドライトのようなアメリカの荒野に育ったモダユストは、素材の暖かみにこだわった。
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けれどもそれはあくまでも例外であって、ルーコルビュジエをはじめとする多くのモダユストらは、鉄とガラスとコンクリートを主たる素材とし、それらを使って明快に全体を構成することを目指した。モダユストにとって重要な関心は、建築の表面の仕上げではなく、あくまでも抽象的な建築の理念にあったからだ。建築家による表面への意識が高まるのは、そうしたモダニズムが批判され始めた一九六〇年代後半以降のことである。抽象的な建築理念よりも、使い手の一番身近なものは、建築の素材であることに、建築家たちはあらためて気づいたのである。
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